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愛でたい人生

もうすぐ30歳

29歳の私に80歳のお友達が出来た話

GW1日目の4/29、私は新宿三丁目で用事を済ませて歌舞伎町のバス停に立っていた。

 

大ガードの下でたまたまデモがあったようで、10分以上遅れてやって来たバスは乗り込むとひどい混雑だった。私はiPhoneで音楽を聴きながら窓の外を見ていたのですぐ気がつかなかったけれど、後ろに杖をついた女性が立っていた。

 

「荷物を置かせてもらえるかしら?」と声を掛けられハッとして目の前のスペースに女性の手荷物を3つ置いた。

 

「どちらまでおいでになりますか?」と尋ねると私が降りるのと同じ停留所だった。

 

「あなた背が高くて髪が短くて男性かと思ったのよ。そうしたら綺麗なお嬢さんだった!」と笑う女性は紺のテーラードジャケットに白いパンツ、スカーフを巻いてハットを被っていた。とてもお洒落だった。世間話をしていたら目の前の席が空いたのでそこへ誘った。

 

途中道路工事があったりで車内も道も混みっぱなし。ようやく着いた目的地、降りるときに手を貸して2人でゆっくりステップを降りた。
家族と待ち合わせをしている店へ向かうと告げると女性もたまたま同じ方向を目指していた。

 

「私には15も上の姉がいてね、この先の〇〇っていう養護施設にいるのよ。今日は姉の誕生日だからここまでやって来たのよ。」と笑う様子がとてもチャーミング。腰の曲がったおばあさんが荷物を持ってバスに乗り訪ねてきた苦労に思いを馳せた。

 

「15歳上の…?」と私が驚いていると「おばあさんで恥ずかしいわ!姉は95なのよ。私ももう80だから。」と教えてくれた。私もこんな風にかっこいい女性になりたい。おしゃれして出掛ける可愛いおばあちゃんになりたい。


「お姉さんお誕生日おめでとうございます!ちなみに私も明日29歳の誕生日なんです!」と思わず言ってしまった。あらま〜!と喜んで握手してくださった。「あなたみたいな若い方に親切にしてもらって本当に嬉しくて楽しかったわ!」と言って別れた女性の背中を少しの間見送った。私も楽しかったし、もっとお話したかったな〜と素直に思った。

 

家族と合流した後でスーパーの中にあった小さな花屋さんで小さなブーケを買った。メッセージカードの用意は無く、仕方なくたまたま一枚持っていた名刺の余白に“お誕生日おめでとうございます!”とだけ書いた。


 

教えてもらった施設はすぐ先で、家族にも着いて来てもらって受付に向かった。「おそらく15分くらい前にこちらへ訪ねていらした、杖をついた女性とたまたまバスで知り合って、こちらにいらっしゃるその方のお姉さんがお誕生日だと聞いたので…もしご迷惑でなければお花を届けてほしいのですが。」と伝えた。

 

「面識のない方からの訪問はちょっと…それにその女性がどなたなのかもすぐはわからないし…」と受付の女性は困った様子だったけれど、カウンターには来訪者は全員記入する用紙があった。訪れた人と入居者との関係や来訪時間がわかるようだったので「もちろん個人情報はわからなくて良いので、このお花だけもし良ければぜひ…!」とだけ伝えて外へ出た。


それから3日後の5/2、黙々と仕事をしていた夕方、打ち合わせから席へ戻るとデスクに封筒が置いてあった。ハッとした。達筆な宛名書きを見て手紙の差出人にピンと来たから。嬉しくて心臓がドキドキした。思いつきだったけどお花を届けて良かった。ちゃんと言づけしてくださった施設の方にも感謝した。

 

封を開けるとフランスの画家ニキ・ド・サンファルの鮮やかなカードが入っていてあの時の女性のスカーフの色を思い出した。


 

手紙にはお姉さんがお花を喜んでくださったこと、バスで出会ってから20分くらいの私とのやりとりが嬉しかったこと、ご自身のことがたくさん書いてあって本当に嬉しいお便りだった。


 

メッセージの最後は「This is a love letter for you! キモチワルイ」と締められていて笑ってしまった。可愛い!

29歳の誕生日を迎えた私に80歳の素敵なお友達が出来た。